風が強くて、猫が騒ぐ満月の夜。平凡な日々を送る真木晶は、謎の男に導かれ、魔法使いと人間が共存する世界へ召喚された。年に一度、大いなる厄災と呼ばれる巨大な月が襲来するこの世界で、晶は賢者として魔法使いとともに月と戦うことになり…?
評価★☆☆☆☆
原作はスマホゲーム。
colyより開発・配信されているスマートフォン向けゲームアプリ(ソーシャルゲーム)。
略称は「まほやく」。
ビジュアル的に乙女ゲーかと思ったが調べてみると主人公は男性・女性で選択できる。
アニメでは女性主人公となっている。
賢者さま
主人公はアキラという女性。
マンションのエレベーターに乗ると突然見ず知らずのイケメンから「賢者さま」と声をかけられ、
そのまま世界を救うために異世界に召喚される。
エレベーターに乗った時点で異世界行きは確定しており、
着の身着のまま異世界へ強制連行。
異世界に着くと「賢者さまバンザーイ」と大歓迎される。
主人公は「賢者」であり、「魔法使い」たちを束ねて「大いなる厄災」と戦うために召喚された。
原作はガチャで召喚したイケメン魔法使いを育てて戦う育成ゲームだ。
でも戦闘シーンは11話までない。衝撃だ。
アニメだと課金しなくてもぞろぞろ個性派イケメン魔法使いたちが登場する。
ここまで主人公は言われるがまま行動しており、あまり自我を感じない。
ゲームでも主人公の存在は薄いようで原作準拠なのだろうが、アニメとしては微妙だ。
魔法使い
このアニメには個性派イケメン魔法使いが大勢登場する。
主人公が女性ということもあり乙女ゲー感が強い。
でも恋仲とかそういう雰囲気にはまったくならない。
BLというわけでもないが魔法使い同士でやたら親密な雰囲気を出したりもする。
軍服、じじい言葉のショタ双子、セクシーなバーテンなど、
キャラゲーというだけあってキャラクターの見た目も性格もバリエーションが豊富だ。
しかもキャラの周囲がキラキラ輝いてみえる。
比喩とかではなく本当にキラキラした粒子が舞っている。
アイドル粒子だ。
あまり魔法使いっぽくない個性的な面々だが、みんな魔法使いらしく箒で空を飛ぶ。
箒のデザインも個性に溢れ無駄におしゃれだ。
でもたまに箒がなくても普通に飛んだりする。
大いなる厄災は年に1度襲ってくる。
意外とインターバルが長い。
モンスターが襲ってくるのをイメージしていたが、月が襲来するらしい。
「らしい」と言ったのは作中で実際に大いなる厄災は登場しないからだ。
次の厄災まで1年猶予があり、アニメではそこまで時間が進まずに終わってしまう。
物語の核心となる部分だけに話だけで終わってしまうのは非常に残念。
次の厄災までに互いの絆を深め、力を蓄えるというのがこのアニメの主な内容となっている。
大いなる厄災と戦うファンタジー作品というイメージを勝手にもっていた。
しかし実際はほとんどが会話劇となっていて戦闘シーンがあるのは最後の2話だけ。
見始めたあたりはどんな敵が出てくるんだ?と思っていたが、そもそも敵が全然出てこないという予想外。
主人公がくる前に大いなる厄災との戦いで20人いた魔法使いが半分まで減ってしまった。
減った戦力を補充するために、主人公は新たな魔法使いを召喚(ガチャ)してほしいと頼まれる。
魔法使いは人間の中から突然変異のように生まれる。
魔法使い自体はそれなりにいるようで、ただの魔法使いの中からガチャによって厄災と戦う「賢者の魔法使い」が選ばれる。
当たったら問答無用で世界のために戦わなければいけないという凄まじい貧乏くじだ。
でもみんな文句を言わずに戦ってる。偉い。
属性(性格)
この世界には東西南北と中央の5つの国がある。
東の魔法使いは「人嫌い」、西は「自由奔放」、南は「優しい」、北は「攻撃的」、中央は「正義感が強い」など出身ごとに特徴がある。
属性のようでいかにもゲームっぽい。
デレマスでいうパッション、クール、キュートみたいな感じだ。
でも正直デレマスとかやったことないから本当はよくわからない。
属性が同じでも話し方や性格はバラバラで各々キャラが立っている。
デザインに関しても個性的なキャラばかりで面白い。
ただ魔法使いというよりアイドルっぽい。
いざ召喚をしようというときに色々と問題が多発しまくる。
赤髪イケメンの目が悪くなり、
双子ショタじじいが絵に閉じ込められ、
魔法使いを嫌っている人間たちが襲撃してきたかと思えば、
セクシーバーテンダーの心臓が燃え始める。
イベントの大渋滞だ。
あまりにも唐突に色々なことが起き始める。
厄災との戦いの後遺症が原因のようだ。
いたって真面目なシーンのはずだが状況がカオス過ぎて笑ってしまう。
そんなこんなしてるうちに新たな魔法使いが召喚される。
主人公は特に何もしていないのに勝手にチュートリアルガチャが始まる。
いかにもガチャっぽい演出で新たな魔法使いがガンガン召喚される。
しかも単発でなく10連だ。
10連ガチャを回させるために前回の厄災では10人が犠牲にされたのではないかと邪推してしまう。
新たに召喚された魔法使いたちも個性的だ。
魔法使い兼中央の国の王子や魔法より拳で殴った方が早い羊飼いなど、愉快な仲間たちが一気に10人増える。にぎやか。
合コン
新たに召喚された魔法使い兼王子が突然合コンを企画する。
合コンという名のただの自己紹介だ。
なぜ合コンと言ったのかはよくわからない。
魔法使い同士の結束を高めるために互いの情報を交換しようとする。
元々知り合いの魔法使いもいれば、馴れ合いを嫌う魔法使いもいる。
個性派揃いの魔法使いたちを束ねるはずの主人公だが存在感はかなり薄い。
主人公は基本的にその場に居合わせているだけで、いなかったとしても問題なく話は進んでいく。
原作ゲームでも主人公の存在感は薄いようで、その点では原作の雰囲気を壊さないようアニメ化しているといえる。
ただアニメとしては自我の無さ過ぎる主人公は魅力に欠けるのも事実。
ときどき魔法使いたちの心に響くセリフを言ったりするが、基本的にイベントを傍観しているだけ。
感情の起伏もあまりなく、まさに画面外から眺めているプレイヤーのような存在だ。
魔法使いたちを主人公として観ることもできるが、エピソードごとにメインとなるキャラもコロコロ変わるため、なかなか感情移入しにくい。
たまに主人公の思っていることがセリフでなく文章で表示される。
視聴者の速読力を試しているかの如く一瞬しか表示されない。
一時停止しないと読み切れないのだが、正直一時停止して読むほど重要な内容でもない。
でも読み切れないとそれはそれで気になってしまう。
結局、一時停止して読んでしまったがやっぱりどうでもいい内容しかなかった。
なぜこういう演出にしたのかもわからず、ストレスを感じるだけの要素になっている。
会話劇
中盤を過ぎてもやっていることはほとんどイケメン同士の会話劇だ。
色んなキャラの日常の一コマを順番にみせられる。
キャラごとの重い過去を語ったりもするが、回想があるわけでもなく口頭で簡単に説明されるだけで退屈な時間が多い。
7話あたりになると少しメインストーリーが動き出す。
魔法使いと賢者のためにパレードが開催され、そこで新たに魔法科学兵団というものが登場する。
魔法使いの力を借りなくても大いなる厄災を撃退するために開発された兵団だ。
魔法科学兵団の装備はマナ石という魔力のこもった石を原動力にしており、マナ石は魔法使いの死体からも手に入る。
この事実によって「魔法使い狩りが起こるぞ」とシリアスな発言が飛び出す。
面白くなりそうな展開だが、結局魔法使い狩りなんて起こらないし触れられすらしない。
そんなことはどうでもいいと言わんばかりに他の問題が発生する。
謎の怪物によって塔が破壊されたり、
魔法科学兵団の団長が飛び降り自殺しそうになったり、
墓荒らしや怪しい儀式の痕跡を発見したりする。
細切れ
面白そうな展開になってきて、本来であればメインストーリーに集中していく流れのはずだ。
徐々に会話劇の頻度も減ってくるかと思いきやさらに増えてくる。
メインストーリーに関係のない会話劇が小刻みに挟まり、コロコロ場面転換するせいでストーリーに集中できない。
原作が色んなキャラ同士の会話を楽しむゲームというコンセプトであり、なるべく多くのキャラに出番を用意する必要があるの理解できる。
しかしそのせいで場面転換が多発し、話のテンポは悪くなり、面白くなりそうなメインストーリーも全然頭に入ってこない。
これまで起きた不可解な事件は全てつながっているという物語が収束していく展開のはずが、全然関係ない話も間に挟みまくるせいで、本当に重要な話がどれなのか非常にわかりにくい構成となっている。
戦闘
物語が終盤にさしかかり、今まで溜まっていたメインイベントが怒涛の勢いで押し寄せる。
魔法科学兵団長は鳥のような怪物にされてしまい、
それとは別の鳥の怪物も登場し、
町にはゾンビが溢れ、
魔法使いの一人が獣になって理性を失い、
全ての元凶は謎の魔法使い「ノーヴァ」の計画だったことがわかる。
敵も登場し最終話にしてやっと本格的な戦闘シーンが始まる。
待ちに待った戦闘シーンではあるが動きは固いし、エフェクトも安っぽく作画崩壊こそしていないがクオリティは低めだ。
それでも鳥の怪物を協力して倒す場面はそれなりにカッコイイと思えた。
キャラデザ自体がカッコイイので変に動かさなくても止め絵で結構絵になる。
怪物にされてしまった哀れな魔法科学兵団長は無慈悲にも灰にされてしまう。
あっさり灰にされてちょっとビックリ。
馴れ合いを嫌っていた魔法使いたちも協力して黒幕であるノーヴァもサクッと撃退する。
尺の都合でわざとやられてくれたようにも見えてしまう。
もう一羽の鳥の怪物・トビカゲリも最強の魔法使いである「オズ」があっさり撃破する。
賢者の魔法使いたちの活躍がしっかり描かれており、みんなちゃんと強い。
最初はいがみ合っていた魔法使いたち全員が力を合わせて強敵を退けるという王道展開。
存在感の薄い賢者も最後は役割をしっかりこなし、国の危機を救った魔法使いたちは国民から歓声を浴びるという綺麗な終わり方だった。
総評:イケメン会話劇
原作ゲームのジャンルが「魔法使いと心を繋ぐ育成ゲーム」なのだが、アニメは「魔法使い同士が心を繋ぐ会話劇」といった感じだ。
魔法使い同士がイベントを重ねて徐々に絆を深めていく会話劇がメイン。
主人公は重要な場面以外はいてもいなくても問題ない微妙な存在。
会話劇がメインであること自体はいいのだが、内容がかなり退屈。
原作のメインストーリーは結構出来がいいと評判だったので期待したが、シリアスな展開が始まっても会話劇が小刻みに挟まってくるので致命的なまでにテンポが悪い。
場面転換が多すぎるせいで、いちいち話の腰が折られ複雑骨折している。
シナリオが渋滞して色んな事が同時多発する現象は、制作側が意図した面白さではないだろうが笑えて楽しかった。
内容のほとんどが日常シーンのため作画はそこまで気になることはない。
キャラの動きが固いと思う場面はそれなりにあるが、作画崩壊は回避できており一定のクオリティを維持できている。
しかしその一定のクオリティがそもそも低めなので映像に関しては特に褒められる点はない。
キャラゲーというだけあってキャラデザはいい。
見た目だけでなく話し方や性格などキャラ毎にしっかりと個性が際立っている。
推しキャラを見つけられればそれなりに楽しめるかもしれない。
オズが一番カッコイイ。
本来であればメインストーリーも各キャラごとのエピソードも原作では丁寧な展開となっているのだろうが、アニメでは尺の都合もあるためカットされている部分が多いのだろう。
アニメだけど大して動くわけでもなかったので、普通に原作ゲームをプレイした方が楽しめたかもしれない作品だった。