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クズに始まりクズに終わる「RINGING FATE」感想・レビュー

4.0
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どういうアニメ?

中国の動画配信サイト、「bilibili」によるオリジナルアニメ。
MOJOと元気蛙の合作。
中国産のアニメだからか日本のアニメにはない独特の雰囲気を感じる。

生と死の狭間の世界で、生き返る権利をかけて戦うというメカバトルアニメ。
これだけだとよくあるバトルものだがキャラデザがまるで子ども向け番組みたいでギャップが強烈。
アホほど明るい主人公と前世で極悪人だったとか言われてるわりにかなり面倒見のイイしゃべるヘルメットのサブローが協力して戦う。

映像はフルCGでクオリティも高い。
メカデザインも結構カッコイイ。
最終バトルはここ最近のアニメの中でもかなり盛り上る屈指の戦闘シーンといえる。

後半になっていくにつれて人間ドラマ的なおもしろさも出てくる。
見た目はどうぶつの森とかに出れそうなキャラが裏切ったり騙したり人間的な汚い部分をさらけだすアニメはなかなかないだろう。
1期は序章のような感じで完結はまだ遠そうだ。
尻上がりに面白くなる作品であるがゆえに続きが気になってしまい苦しい。
2期がくるまでいっそ観ないのもありかもしれない。

生と死の狭間で生きる、ゆるキャラたち

1話はいきなり生と死の狭間である「クウ」と呼ばれる世界で主人公が目覚めるところから始まる。
簡単に世界観を説明すると生前に強い未練を抱えて死んだ人間はクウに迷い込むらしい。
死ぬとき未練のない奴なんてほとんどいないと思うが、本当に強い未練がないとクウにはこれないのだろう。
その証拠に後々登場するキャラは全員それなりに重い生前のエピソードを抱えてる。

クウでは記憶のことを「カン」と呼び通貨の代わりにもなってる。
クウに来てすぐは記憶の大分部分を失っているが失った記憶を取り戻す方法がある。
運命のリングという試合場でお互いに記憶をかけて戦い、勝った方は記憶を取り戻し、負けると失う。
勝ち続けて生前の記憶を全て取り戻したとき生き返る権利が得られるらしい。
その証拠に実際に生き返ってその後またクウに来ている人生何週目かわからない勢もいるようだ。

主人公はカナメという少女で生前は病気で人生のほとんどを病室で過ごしていたようだ。
身体が自由に動かせるだけで喜びを感じている姿は早くも胸に来るものがある。
こういうの弱いんだよね。

世界観を行動で示してくれるクズ第一号

クウに来てすぐ暴漢に襲われるがネコミミの少年が助けてくれる。
カナメと視聴者に対して世界観の簡単な説明するという親切っぷりをみせて役割を終えたあとにすぐ裏切る。
1話でしっかりとこの世界の厳しさをカナメと視聴者に教えてくれるお手本のようなクズだ。
キャラデザで勘違いしてしまった視聴者に「これは子ども向けではない」ということを行動で示してくれる本作第一号のクズ。
まだ戦い方もわからないカナメを騙して自分と試合するよう仕向け、記憶を全て奪い取ろうとする。
ちなみに記憶をすべて失うと消滅する。
この試合に負けただけでカナメは2度目の死を迎えるという崖っぷち。
ここまで登場人物ほぼすべてがゆるキャラなのにいきなり生死が関わってくる展開にビビる。

絶体絶命だがカナメがこの世界に来た時なぜか近くに落ちていたしゃべるヘルメットのサブローの力を借りて試合に勝利する。
サブローも生まれ変わってこの世界に来たようだが、重い罪を犯した者は人でなくモノに転生させられてしまうようだ。
自分のことを被った相手の身体を奪うこともできるようでカナメに負けたくなければ俺を被れと誘導する。
結果としてサブローがカナメの身体を操り試合に勝利する。
そのままカナメの身体を奪うつもりだったがなぜか奪えずカナメに無理やり相棒にさせられる。
最初は体を奪うつもりだったサブローが徐々にカナメを見守るようになっていくのが割と尊い。
重罪を犯した極悪人の割にかなり面倒見のいい印象だ。

ご当地キャラになれそうでなれなかった奴ら

登場するキャラはだいたいが3頭身のデフォルメされた可愛らしいデザインになっている。
キャラデザだけならどうぶつの森とか子供向けのアニメのようだ。
人間のようなキャラもいればケモノっぽいキャラもいてかなりバリエーションがある。
モブですらそれなりにキャラの立ったデザインをしている。
まるでご当地キャラの博覧会だ。
キャラクターたちの日常はかなりコミカルに面白可笑しく描かれているが、時折前世の話など重たい内容もぶっこんできたりする。

金が無くて娘を死なせてしまったボクサー、死後の世界を証明しようとしたイカレ学者に巻き込まれて死んだ女性、一族を皆殺しにされた剣士、飼い主が自殺した後も帰りを待ち続けた犬、その飼い主が自殺する原因を作った本作最高峰のクズなどなど。

各主要キャラが強い未練を抱くきっかけとなったエピソードがしっかりと掘り下げられる。
家族愛など感動的な話もあれば終盤に救いようのない胸くそエピソードまで色々な人間ドラマあって飽きることはない。
一部人間じゃないのもいるけど。

主人公のカナメはアホだが底なしに明るい性格。
キャラデザの可愛らしさも相まって多少暗い話になっても無理やり明るく照らしてくるLEDような主人公だ。
どんな逆境でも諦めず、アホだが自分なりに何が正しいのか頑張って考えたりもする応援したくなるような主人公といえる。
常に天真爛漫で理想論を語るカナメにサブローが現実を突きつけることを言って衝突するが、なんやかんや二人で協力したり周囲の手助けを得て成長し、困難を乗り切っていくのが観てて微笑ましい。

3頭身と1頭身が合体して8頭身になる

運命のリングではメカに乗って戦う。メカデザインはなかなか武骨だ。
主要キャラのメカはしっかりと個性を感じるデザインになっていてどれもカッコイイ。

映像はエフェクトが派手で見応えがある。
ヒットストップのような感じで攻撃が当たるとストップまたはスローになる演出が多い。
最初の戦闘の出来が良すぎたのもあるが、中盤は地味なバトルも多く展開的にもあまり盛り上がらなかったりもする。
しかし最終決戦は文句無しの最高のバトルになっている。

最終決戦では友人でもあるエデンと戦うことになる。
カナメはエデンが操られていると思い、洗脳から解放するために戦っている。

ここまでヒットストップが多用されたが最終決戦では常にヌルヌル動きまくる。
3頭身のカナメと1頭身のサブローが人機一体となり8頭身の美少女に変身する。
二人の想いが一つになったことで覚醒したようだが詳しい理屈はわからない。
そんなのどうでもいいくらい展開も最高潮を迎えているので何も気にならない。

8頭身になったスラっとした体で美麗な剣戟をみせてくれる。
回避など動きの一つ一つが無駄にカッコイイ。
少し映像がアップ過ぎて観づらさを感じてしまう部分もあるが作中一番の盛り上がりをしっかり最後にもってきてくれているのは素晴らしい。

最終話なんだから救われてくれ

カエデはエデンが操られたり洗脳されたせいで悪い奴になってしまったと思っているが、実はそもそも作中屈指のクズだったというオチ。

序盤から登場するエデンとティムという友人キャラがいる。
ティムはメカなどを修理販売する店をやっていてエデンはそれを手伝っている。
この二人は互いに親友のような切っても切れない関係として描かれているのだが、終盤にこの二人の生前のエピソード判明し、救いようのない事実が明らかになる。

生前のティムは野良犬だったがアカリという女性に拾われて幸せに過ごしていた。
ここまでみんな前世は人間だったのにお前だけ犬だったんかいという別の衝撃も感じたがとりあえず置いておく。
クウに来てからもアカリがどういう運命を辿ったのか知りたがっていたのだが偶然真実に辿り着く。

ある日アカリは会社の同僚男性に騙されて呼び出されレイプされてしまった。
その出来事をキッカケにまともに働くこともできなくなり人生に絶望し自殺してしまう。
そのレイプした男が実は生前のエデンだ。
しかもエデンは終盤までその記憶を忘れていたようで、最後に前世の記憶を思い出したことで作中屈指のクズとして再覚醒する。

カナメはエデンが操られたり悪い奴にそそのかされたと思っていたけど、実際は真正のクズだったという誰も救われないオチだった。
普通のアニメなら逆だよね。
改心する流れなのにさらなるクズ道に墜ちていくという展開には驚かされた。

ちなみにティムはあまりにショックだったのかそれとも未練がなくなってしまったのか定かではないが、この世界から旅立ってしまう。
後味悪すぎてびっくりだけど、その分続きは非常に気になる終わり方だった。

総評:序章です。

最終目標が生き返る権利を得ることだからまだまだ先は長そう。
全体的なクオリティは物語も映像も結構よかった。
重い話でも主人公の明るさとキャラデザの可愛さであまり重苦しくなりすぎずに視聴できたと思えるのでゆるキャラみたいなキャラデザもそういったことを意図しているのかもしれない。

内容的には本当に序章という感じだった。
戦いの苛烈さも今後さらに増していくのだろうなと感じる。
運命のリングにもランクがあるようで本作は最低ランクでの戦いのようだ。
今後さらなる強敵や更なるクズが登場するかと思うと続きが気になって仕方がない。

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