ラブストーリー

テンプレ×韓国「あの星に君がいる」アニメレビュー

ラブストーリー

2050年、ソウル。ナニョンは、第4次火星探査プロジェクトのクルーになりたいと願っていた。クルー選抜最終テストに挑むものの落ちてしまった彼女は、オーディオ機器修理店で働くミュージシャンのジェイと出会う。お互いに惹(ひ)かれ合う二人だったが、ナニョンに火星探査のチャンスが舞い込んでくる。

評価★★★☆☆(55点)

Netflixオリジナルアニメ映画。
監督はハン・ジウォン。
唇の書き方とか服装とか髪型が韓国っぽい。

主人公は宇宙飛行士として火星探査員になることを目標としている女性ナニョン。
母親も宇宙飛行士だったが火星探査の任務中に帰らぬ人となってしまった。
母親の痕跡をみつけるために自分も火星探査員を目指している。

映像美

まず背景がとても綺麗だ。
今よりも少し未来の世界が緻密に描かれている。
空中に浮く電光掲示板から修理屋の棚に置いてある器具や配線一つ一つまで細かく描かれている。

CGも使っているのか背景がかなり立体的にみえる場面もあり、
まるで画面に吸い込まれるような錯覚を覚える。
近未来の世界だが昭和や平成のレトロっぽさも感じられる。
ブラウン管テレビ、レコード、シャッター街など懐かしさを感じさせる景色も多く、目で見て楽しい映像になっている。

出会い

科学者の女性「ナニョン」は、
母親の形見であるレコードプレイヤーを直すために修理屋を探しており、
修理屋の青年「ジェイ」に出会う。

街角で偶然ぶつかってしまうといういかにもラブストーリーっぽい出会いだ。
ロマンスの始まりとしては使い古された感のある展開ではあるが、
広く知られているテンプレであるがゆえに、
誰が観ても「恋の始まり」を予感させる分かりやすい導入となっている。

ジェイははじめからナニョンが気になっているようで、
修理を口実に食事に誘ったり積極的だ。
それに対してナニョンはジェイに惹かれる様子もなく、
修理屋と客として接している。

ジェイに会った帰り道、突然雨が降ってくる。
傘も持っておらず立ち尽くすナニョン。
そこへジェイが傘を持って駆けつける。
ナニョンが傘をもっていなかったと気づき、急いで追いかけてきたようだ。
話すのも苦しそうに息を切らしながら傘を差し出すジェイをみて、
ナニョンは心の底から笑う。
この時、彼女の中でジェイはただの修理屋ではなくなった。
非常にありきたりな展開だが、つまらないという訳ではなく韓国独特の作画やデザインは珍しくそれなりに楽しくみれる。

二人は自然と惹かれあっていくが問題もある。
ナニョンの夢は火星探査に行くことだ。
当然、夢が叶うということは二人は長い間離ればなれなることを意味する。
夢を叶えると確信しているからこそ、ナニョンは「責任とれない」と一度はジェイを突き放そうとするが、溢れる想いを止められるわけもなく二人は結ばれる。

理性では二人の未来に試練が訪れることが分かっている。
地球と火星の超遠距離恋愛なんてこの上ない試練だろう。
たとえそうでもツライ未来を恐れずに、幸せな今を大切にする。
シンプルだが非常に心に響く展開だ。
こういうのでいいんだよこういうので。

すれ違い

ナニョンは火星に行くという目標を叶えるために努力を続けながらも、
ジェイとの思い出を積み重ねていく。
ある日、ジェイがナニョンの部屋を片付けているときある映像をみてしまう。
ナニョンの母親が火星から送ってきた映像だ。そこには火星の基地が倒壊していく様子が映っていた。
ジェイは火星に行きたいというナニョンの夢を応援していたが、それがどれだけの危険を伴うことかちゃんとは理解できていなかった。
映像をみたせいで火星に行かせたくないという想いが生まれてしまう。

そんな時ナニョンは念願の火星探査員に選ばれる。
喜ぶナニョンに対してジェイは火星へ行かないでほしいと伝える。
ナニョンは初めからこうなるとわかっていたからこそ、
ジェイと結ばれそうになったとき一度は突き放そうとした。
夢を諦める気はないナニョンは「これで終わりにしよう」と切り出す。

このまますれ違った状態で宇宙へ旅立ってしまうかと思ったが、
割とサクッと仲直りして気持ちよく宇宙へ向かう。

カクカク

途中まで綺麗だったアニメーションが急にカクカクしてくる。
作画枚数があからさまに減っているようなカクついた動きになっており、動きが激しいシーンではそれが特に目立つ。
コマ送り演出にしては動きすぎており、演出だとしてもどういった効果を狙っているのかわからない。
序盤のクオリティが高かっただけに後半のカクカクが悪目立ちしている。

超遠距離恋愛

地球と火星の超遠距離恋愛がこの作品の大きな特徴かと思っていたのだが、結論からいうと遠距離恋愛要素はかなりあっさりしている。
遠距離恋愛自体には何の問題も発生しない。

正直ケンカ別れしたまま宇宙へ旅立ってしまい、超遠距離恋愛の状況でどうにかして仲直りしていくのかなと思っていた。
しかし出発直前にあっさり仲直りしてしまい、出発後も発達した通信技術のおかげで頻繁に連絡をとれていたようにみえる。
直接会いたいとは思っているだろうが、未来の技術で互いに隣にいるように話せているし、現代と比較すると遠距離恋愛のハードルがガクッと下がっている。

せっかくの火星と地球の超遠距離恋愛も快適な通信技術があると普通の遠距離恋愛と変わらない。
ここまでどこかで見たような展開がばかりだったが、
超遠距離恋愛という独特の要素も活かせないまま、なんの変哲もないストーリーが続く。

ガバガバ火星探索

火星で調査を続けているナニョンは前回の火星探査員たちが使っていたローバーをみつける。
単独で回収に向かうが、そこで生体反応を検知する。
通信障害で基地と連絡がつかない状態にも関わらず生体反応を追ってガンガン危険場場所に踏み込んでいく。

さすがに無鉄砲すぎる。
母親の痕跡を期待して興奮してしまったのだと思うが、天候が悪くなってくる様子もある中、基地からの指示も確認せずに、一歩間違えたら転落死してしまうような崖を降っていく。
一度基地に戻って調査するべきところを、
あまりにも危険をかえりみず進んでいくナニョンの行動は、
わざと危機的な状況を起こそうという制作側の意図を感じてしまい白ける。

危険を脱するまでは主人公が観ている幻覚や幻聴が映像として表現されているが、
なぜここまで幻覚をみるような状態になっているのか、
なぜこんな状態でさらに先に進めるのかという視聴者が自然と状況を受け止められる説得力が大きく欠けている。
そのせいでナニョンの行動が理解できず、共感もできるわけがなく、置いてきぼりにされているような感覚になり一気に冷める。

終盤にさしかかり物語を急いで盛り上げようとしているのだろうが、
急ぎ過ぎて崖から転落してしまっている。
火星と地球の超遠距離恋愛という普通のラブストーリーにはあまりない要素をうまく行かすことができずに終わってしまった。

総評:どっかでみたことある

特徴として火星と地球の超遠距離恋愛を謳っていたが、
いざ視聴してみたら遠距離恋愛は別になんの見所にもなってない。
通信技術が発達し過ぎてるのもあって宇宙と地球の遠距離恋愛も大した恋の障害になっていない。

アニメーションや背景など映像のクオリティは全体的に高めだ。
キャラの動きや表情もイキイキしていた。
その分後半のキャラの動きがガクガクして悪目立ちする部分は残念。

ラブストーリーとしては無難オブ無難な内容。
どこかで見たことのある展開が多く、先の展開も予想がつきやすい。
だからといってすごいつまらないというわけではなく、テンプレなラブストーリーであっても韓国独特のデザインや表現もあり、割と楽しめた。

ただし終盤の展開が非常にネックになっている。
そこまではナニョンとジェイの考えや感情に共感できるものだったは、火星に行ってからのナニョンの行動は不可解過ぎてまったく共感できない。

全体的にみるとそんなに悪い作品じゃないんだけど、
終わりの印象が悪いとやっぱり悪い部分が記憶に残ってしまう。

超遠距離恋愛とか言うくらいだからもう少しひねりのあるストーリーが観たかったというのが正直なところ。
ありきたりなラブストーリーではあったけど、昔からよく使われる展開の数々は何度使われていてもそれなりに面白くなるんだなというテンプレの偉大さを改めて感じさせるアニメでもあった。

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