アニメ制作が題材の異世界ファンタジー
高校卒業後アニメーターとなり才能を開花させた広瀬ナツ子。監督としても実力を発揮し、次回作は劇場ラブコメ作品に決定した。そんなある日ひょんなことから意識を失った彼女が目覚めると、そこは子供のころに夢中になったアニメ映画の世界で…?
監督 山崎みつえ
脚本 うえのきみこ
アニメーション制作 MAPPA
本作はMAPPA制作の完全オリジナルアニメ。
新進気鋭のアニメーター兼監督である広瀬ナツ子が主人公。
アニメーターが主役の作品だが物語の舞台となるのは現代ではなくファンタジー。
広瀬ナツ子がアニメーターを目指す切っ掛けとなった映画「滅びゆく物語」の世界。
自身のバイブルとも言える作品に迷い込む異世界ファンタジーのような内容。
ナツ子の知る映画では次々仲間を失った勇者ルークが世界に絶望し、
守るべき世界を自ら破壊することでバットエンドを向かえる。
悲しい結末を変えるためにキャラクターたちと力を合わせて物語を修正していく。
ナツ子の成長
物語全体を通して、
主人公であるナツ子の成長が描かれている。
ナツ子は小さいころに見た映画「滅びゆく物語」を観て以来、
登場するキャラクターや関連する作品をひたすらトレースすることで画力を磨いてきた。
全てはアニメ界の巨匠になるため。
尋常ではない努力によって、
彼女は若くして天才アニメーターかつ天才監督として評価されるに至った。
幼い日からの努力あってこその結果だが、ここまで絵を描くという一点に打ち込めるのは十分天才と言えるだろう。
1話冒頭はナツ子が監督の新作映画「初恋ファーストラブ」の制作現場から始まる。
ラブコメを作ることになったが、
これまでアニメを描くことだけ考えて生きてきたナツ子は恋愛経験など皆無だ。
初恋というものが理解できず制作に行き詰まる。
スタッフが絵コンテをもってくる。
軽く目を通し一言「全修」と告げる。
全修とはオールリテイク、全て描き直しという意味だ。
せめてどう修正すればいいか指示が欲しいと願うスタッフに、
「じゃあ自分で描くからいいです」と冷たい対応。
アニメというのは普通1人では作れない。
多くの人が協力してやっとの思いで1つの作品が出来上がる。
詳しくは知らないが。
しかしナツ子は基本的に他人を信用していない。
自分が一番うまく描けるから全て自分で描くのが正しいと考えている。
こんな状態でよく天才監督と言われる名作が作れたなと少し疑問に思う。
かなり自己中心的な人物に感じられる。
しかし「滅びゆく物語」の世界で多くのキャラクターと交流を深めナツ子の人間性に変化が表れる。
滅びゆく物語の世界に迷い込んだナツ子。
勇者ルークをはじめとしたナインソルジャーたち共にボイドという怪物の群れから街を守る戦いに参加する。
初恋はアニメでした。
戦いの中でナインソルジャーや街の人々と交流をもつようになる。
ルークとの絆も深まる中、ナツ子は自分にも初恋があったことを思い出す。
過去に初恋が確かにあった。しかしそれが恋だと理解できていなかっただけだ。
勇者ルーク・ブレイブハートこそが紛れもなく自身の初恋であることを自覚する。
絆と初恋、失ったはずの青春を取り戻しナツ子は大きく成長する。
人間性が豊かになったナツ子は現実に戻って「初恋ファーストラブ」を見事完成させる。
スタジオのスタッフたちとも積極的にコミュニケーションをとるようになる。
1話ではアニメ制作で思い詰めていたが最終話では晴れやかな表情だ。
これまでアニメ界の巨匠になる一心で人間関係や色々なものを犠牲にしてきた。
ナツ子は犠牲にしてきた大切ものを異世界で取り戻すチャンス得たんだ。
大事なのは絵を描く技術だけじゃない。
描こうとする心だ。
異世界での冒険を通してアニメーターとしての原点・原動力を思い出すような内容だった。
オマージュもりもり
過去の歴史的アニメを元ネタにした戦闘シーンが数多く登場する。
ナツ子は描いたものを具現化して戦う。
ピンチになると持っていたアニメタップ(セルや作画用紙を固定する道具)が光り、
まるで変身バンクのような映像が始まる。
セーラームーンやプリキュアの変身シーンを思い出させるカラフルでキュートな映像だ。
しかしナツ子の姿は変わらない。
変わりに作画机が登場する。
ナツ子が絵を描くために机に座るまでを変身バンクのように表現している。
ただ机が登場するだけなのに驚くほどド派手な演出だ。
ナツ子が作画机使って描いた絵コンテが具現化する。
アニメーターらしい能力だ。
名作アニメのワンシーンをトレースしてボイドを倒していく。
1話では風の谷のナウシカの巨神兵が登場する。
破壊光線1発でボイドの群をなぎ払う。
クシャナ殿下の「なぎ払え!」が脳内で自動再生されるくらい再現度が高い。
他にもタイガーマスク、天元突破グレンラガン、超時空要塞マクロスなどを様々なアニメのワンシーンを再現している。
古くから現在のアニメ制作に多大な影響を与えてきた名作の数々。
アニメーターたちの原点とも言える名作が次々登場する。
まるでアニメ博覧会だ。
元ネタが分からなくても作画のクオリティが高いので観ていて楽しい。元ネタがわからなくても気になったシーンは調べたり過去の名作を知る機会にもなっていると思う。
総評:私的には良作、人によっては名作?
全12話で綺麗に終わった。
物語の内容はシンプルでおもしろかったけど、
最後の最後は駆け足気味で気合いで何とかした感じにしか見えなかったのが少し残念。
オマージュの元ネタについては知識のある人がみれば色々メッセージ性を感じる部分があるのだろう。ライト層の私は作画すごいな~という印象が主だった。
観る人によって作品の深みが全然変わってくるアニメだと思う。
私的には良作止まりだが作品に込められたメッセージを読み解ける人には、
より高評価になるアニメだと感じた。